音源探査入門_第2回

音源探査も他の解析手法と同様、取り組む問題に応じてアプローチを検討することが最初のステップになります。 切り口はいくつもありますが、まず重要なのは、それが定常的な問題なのか、非定常的な問題なのか、あるいは両者にまたがる問題なのかを見極めることです。
定常的な問題とは、たとえば、稼働中のモーターやエンジンから連続的に、間断なく発生する音が、一定の基準(例:騒音レベル)をクリアできないようなケースを指します。一方、非定常的な問題とは、一定のスピードで稼働しているモーターやエンジンから、ある瞬間にだけ、単発的・突発的に異音が発生するケースなどを意味します。
もし問題が非定常的である場合、この時点でシングルプローブ方式のツールは選択肢から外れることになります。非定常現象は時間的な変化を捉えることが本質であり、そのためには、複数のマイクロフォンセンサーを用いて対象面を同時に計測することが必須となるからです。下の左図は、音源探査で用いられる典型的なマイクロフォンアレーの概念図です。青い丸がマイクロフォンで、リング状に配置されています(マイクロフォンの配置はリング形状以外にも様々な形状があります)。このように、複数のマイクロフォンを幾何学的に配置したものを、一般にマイクロフォンアレーと呼びます。対象面上の赤い四角は音源を表しており、そこから各マイクロフォンへ音が伝搬していく様子が、赤い点線で示されています。
音源と各マイクロフォンとの距離はそれぞれ異なるため、音が各マイクロフォンに到達するまでの時間にも差が生じます。もし、対象面とアレーの距離がわかっていれば(たとえば、アレーの中心点から対象面の中心点までの距離)、音速と、各マイクロフォンにおける音の到達時間の違いから、音源の位置を計算することができます。
実は、私たちも日常的に同じことを行っています。下の右図のように、ヒト(あるいは他の動物)は頭部に備わった二つのマイクロフォンセンサー、すなわち左右の耳を用いて、音がどの方向から来たのか、さらにおおよその距離感を判断しています。左右の耳に届く音の時間差や音量差を手がかりに、無意識のうちに音源の位置情報を推定しているわけです。もちろん、この能力には個人差があります。中には、長年の経験により、極めて高い精度で音源を特定できる技術者もおり、その感覚は、しばしば職人芸の域に達して、計測のプロたちも驚くことがあります。
・・・・次回へ続く
※ 音は多くの場合、構造体の振動や空気の圧力変動の結果として生まれます。振動や圧力変動がなければ、音も生まれません。音とは、ヒトの認識能力に限定された(20Hz〜20kHzの)空気の振動ともいえます。たとえば、音源探査により音の発生源をみきわめ、同時に取得したカメラ動画からVMA技術でモードを解析する。このような包括的なアプローチが、従来の工程を見直し、抜本的な効率化と開発スピードの向上につながる選択肢となりえます。